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【平成25年司法試験再現答案】民事系第3問 ※旧ブログ記事転載

司法試験

再現率:70%くらい

第1 〔設問1〕について

1.確認の利益の意義

(1)確認の訴えの訴訟物は理論上無限定である上、確認判決に執行力がないため紛争解決手段として迂遠であり、必ずしも紛争の抜本的解決になりにくい。そこで、確認の訴えの訴訟要件として、確認の利益が必要とされる。

(2)確認の利益は、原告の権利又は法律的地位に危険・不安が現存し、かつ、それを除去する方法として原告被告間で一定の権利又は法律関係の存否の確認をすることが有効・適切である場合に認められる。この判断にあたっては、①確認対象の選択の適否、②即時確定の必要性、③確認訴訟の選択の適否が考慮要素となる。

2.訴訟Ⅰに確認の利益が認められるかの検討

(1)訴訟Ⅰは遺言の無効確認の訴えであるところ、問題文の昭和47年判例は、遺言が有効であるとすれば、そこから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合には、わざわざ請求の趣旨を現在の個別的法律関係に換言して表現せずとも審理対象に明確さを欠くことはないこと、遺言という基本的法律関係の効力の確認により、確認訴訟の紛争解決機能が果たされることを理由に、確認の利益を認めている。

(2)もっとも、上記判例の事案は、相続人が原告を含めて6人もいた事案であったところ、本件においては、Aの夫は既に亡くなっており相続人はE一人のみであって、この点で両者の事案は異なっている。すなわち、相続人がEしかいない本件においては、甲1に関する遺言①をめぐる利害関係人はEとBのみである。

 このような本件事案の下では、Eは、わざわざ過去の法律関係である遺言の無効確認の訴えを提起する必要はなく、むしろ端的に遺言の無効を前提として甲1の明渡請求や所有権移転登記抹消請求をする給付の訴を提起すれば足り、これにより、EB間の紛争解決は十分に図ることができる。

(3)したがって、訴訟Ⅰは、遺言という過去の法律関係の確認である点で①確認対象の選択が適切でないといえるから、確認の利益を欠き不適法であるというべきである。

 

第2 〔設問2〕について

 遺言執行者は、「遺言の執行に必要な一切の行為」をする権利義務を有しており、遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産についての処分権限を失い、当該処分権限は遺言執行者に帰属する(民法1012条、1013条)。問題文の昭和51年判例は、このことを理由に遺言執行者の被告適格を認めたものと解されるが、同判例の事案は、未だ相続財産につき受遺者への所有権移転登記が完了していない段階におけるものであった。

 これに対し、遺言執行者Dが遺贈を原因とするCへの所有権移転登記手続を完了した段階である本件訴訟Ⅱにおいては、甲2の所有権は確定的にCが取得し(民法177条参照)、遺言執行の職務すなわち「遺言の執行に必要な一切の行為」(1012条)は既に終了したものといえるから、相続財産に対する処分権限はもはや遺言執行者には帰属していないというべきである。したがって、昭和51年判例の根拠は、本件訴訟Ⅱにはあてはまらない。

 よって、訴訟Ⅱの被告適格は受遺者Cにあるのであって、遺言執行者Dには被告適格が認められないから、訴訟Ⅱは不適法である。

 

第3 〔設問3〕について

1.小問(1)について

(1)相続による特定財産の取得を主張する者が主張すべき請求原因は、①被相続人による当該財産の所有権取得原因、②被相続人の死亡(民法882条)、③相続を主張する者が被相続人の子であること(887条1項)、の3つである。

(2)本件に即していうと、①Fが土地乙をJから買い受けたこと、②平成15年4月1日、Fが死亡したこと、③GがFの子であること、の3つとなる。

2.小問(2)について

(1)前訴裁判所が、上記請求原因の一部であってGが主張していない事実を判決の基礎とすることができるかどうかは、弁論主義第1テーゼとかかる問題である。

(2)弁論主義とは、訴訟資料の収集を当事者の権能および責任とする建前をいい、第1テーゼとは、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の資料として採用してはならないという原則をいう。もっとも、当事者のいずれかが主張した事実であれば、裁判所はその者に有利・不利を問わず、裁判の基礎とすることができる(主張共通の原則)。

 このような弁論主義第1テーゼが適用される「事実」とは、主要事実すなわち法律効果の発生・変更・消滅を定める法規の構成要件に該当する事実に限られ、間接事実や補助事実は含まないと解する。なぜなら、間接事実や補助事実は、主要事実の存否を推認させる点において証拠と同様の機能を果たすため、裁判官の自由心証(民事訴訟法(以下、省略する。)247条)に服すべき事実だからである。

(3)本件前訴では、小問(1)で検討した請求原因のうち、①は被告であるHの方から主張されているが、②及び③についてはGHのいずれからも主張がなされていない。したがって、前訴裁判所が②及び③の事実を判決の基礎とすることは、第1テーゼに反し、許されないとも思える。

(4)もっとも、②及び③の事実は明確に主張こそされていないものの、生の事実としては弁論に現れていたものであった。

 すなわち、「土地乙は、Gの父Fからその生前に贈与を受けた資金でGがJから買い受けたものである」とのGの主張のうち、「Gの父Fから」との部分はGがFの子であること(③)を意味するものであるし、「その生前に」との部分は現在はFが死亡していること(②)を意味するものであって、生の事実としては弁論に顕出されていたといえるのである。

 そして、弁論主義の機能として不意打ちの防止があること、弁論主義第1テーゼは裁判所の行為規範としてだけでなく結果規範としての性質を有する(312条2項6号)ことに鑑みると、本件前訴のように事実そのものが弁論自体に現れている場合には、適切に釈明権が行使された上でなされる限り、これを判決の基礎としたとしても少なくとも当事者にとって不意打ちとはならないといえるから、結果規範としての観点からは弁論主義第1テーゼに反しないというべきである。

(5)よって、前訴裁判所は、適切に釈明権を行使したならば、当事者から主張されていない②及び③の事実を、判決の基礎にすることができると考える。

 

第4 〔設問4〕について

1.問題の所在

(1)確定判決における訴訟物の存否の判断には既判力が生じる(114条1項)。したがって、本件前訴の請求棄却判決により、Gに土地乙の所有権がないことにつき既判力が生じている。

 そして、本件前訴の訴訟物がGの土地乙に対する所有権であるのに対し、後訴の訴訟物はGのHに対する土地乙の所有権一部移転登記請求権であって、両者は先決関係にあるから、Gに土地乙の所有権がないとの前訴既判力は後訴にも及ぶ。その結果、前訴の事実審口頭弁論終結(以下、「基準時」という。民事執行法35条2項参照。)後の新事由がない限り、後訴は請求棄却となるはずである(既判力の積極的効力)。

(2)もっとも、前訴判決の理由は、土地乙をJから買い受けたのはGではなくFであるとの心証を抱いたためであり、GがFからの相続によって土地乙の所有権の一部を取得したことまでを否定するものではなかった。そして、前訴判決は、HがFから土地乙の贈与を受けた事実も認められないとの理由から、反訴であるHのGに対する土地乙の明渡請求をも棄却している。

 すなわち、前訴裁判所は、FがJから土地乙の買い受けたことを認定するのみで、それ以降の土地乙の所有権の帰趨については何ら認定していないのである。

(3)とすれば、前訴判決により、基準時においてGが土地乙の所有権を有していないことについて既判力が生じるとしても、その結論に至るためにあえて認定する必要がなかった事実(すなわちFがJから土地乙を買い受けた後の所有権の帰すうに関する事実)については、後訴においてこれを主張したとしても信義則上遮断されないと解する余地があるのではないか(遮断効の縮小)。本問で問題となるのはこの点である。

2.信義則を根拠として既判力の遮断効が縮小されるとの主張の検討

(1)問題文の平成10年判決は、金銭債権の明示的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情のない限り、信義則に反し許されないとしている。

 その理由は、一個の金銭債権における一部請求の当否を判断するためにはおのずから債権全部について審理判断することが必要となるところ、前訴の請求棄却判決は、残部として請求しうる部分が存在しないとの判断を示すものに他ならない。にもかかわらず残部請求をすることは実質的には紛争のむし返しであって、信義則に反するから、という点を挙げている。

(2)とすれば、これとは逆に、前訴請求の当否を判断するにあたって審理判断する必要のなかった事実については、請求棄却判決はその事実がないとの判断を示したものとまではいえないし、審理判断されていない以上、後訴でこれを主張したとしても実質的な紛争の蒸し返しともいえないから、信義則上、後訴において当該事実を主張することは前訴判決の既判力に遮断されないと解すべきである。

(3)これを本件についてみると、前述のように、前訴において請求棄却の結論を導くためには、土地乙をJから買い受けたのはGではなくFであるとの事実を認定できれば足りたのであり、その後GがFから相続によって土地乙の所有権の一部を取得したか否かについては認定する必要がなかった事実である。他方、Hの反訴も棄却されているのであるから、HがF以降の土地乙の帰趨について、解決済みであるとの信頼を生じる理由もなかったといえる。

(4)したがって、Gが後訴において、Fから相続によって土地乙の所有権の一部を取得したと主張することは、信義則上、前訴の既判力によって遮断されないというべきである。

以上 

 

【感想】 

設問1と設問2は配点との関係から簡潔に処理し、設問3・設問4をじっくり論じようという方針を立てた。設問3は、判例・通説の立場によって導かれる結論から、もう一歩踏み込んだ論述をしたつもりであるが、功を奏するかどうかはわからない。設問4は、今まで考えたことはなかったものの面白い問題だと思った。時間がなく思うような論述はできなかったが、一応の考え方の方向性は示すことができたのではないかと思う。