読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

司法試験受験生・司法修習生の就職活動②〜大規模企業法務系法律事務所 ※旧ブログ記事転載

1 「大規模企業法務系法律事務所」とは?

一般に「大手事務所」「大手渉外事務所」などと言われますが,本稿では,さしあたり下記の法律事務所を「大規模企業法務系法律事務所」と定義して話を進めていきたいと思います。
 
 【東京】(以下,「東京5大事務所」といいます)
 ・西村あさひ法律事務所(http://www.jurists.co.jp/ja/
 ・森・濱田松本法律事務所(http://www.mhmjapan.com/
 ・長島・大野・常松法律事務所(http://www.noandt.com/
 ・アンダーソン・毛利・友常法律事務所(http://www.amt-law.com/
 ・TMI総合法律事務所(http://www.tmi.gr.jp/
 
 【大阪】(以下,「大阪4大事務所」といいます)
 ・大江橋法律事務所(http://www.ohebashi.com/
 ・北浜法律事務所(http://www.kitahama.or.jp/
 ・御堂筋法律事務所(http://www.midosujilaw.gr.jp/
 
 なお,ここに挙げられていない事務所であっても,後述の採用スケジュールや留意点があてはまる場合があります(例えば,ベーカー&マッケンジー法律事務所,シティユーワ法律事務所,その他外資系法律事務所など)。
 

2 大まかな採用スケジュール

 《法科大学院最終学年次》 
 【4月〜6月】
 サマクラ応募・面接(東京)
 ※大阪でも一部サマクラ募集あり
 【7月〜8月】
 サマクラ(東京・大阪)

 

 《司法試験受験年》
 【4月〜5月】
 個別訪問応募(東京)
 サマクラ応募・面接(大阪)
 【6月】
 個別訪問(東京)→2回〜3回で内定
 サマクラ(大阪)→優秀者には内定
 【7月】
 東京5大事務所で内定がほぼ出そろう
 サマクラ(大阪)→優秀者には内定
 【9月】
 司法試験成績優秀者のみ個別訪問(東京)
 個別訪問開始(大阪)
 

3 サマークラークの重要性

(1)サマークラークとは?

大規模企業法務系法律事務所への就活を有利に進めるにあたって,最も重要なのが「サマークラーク」(サマクラ)への参加です。
 
サマークラークとは,主に企業法務系の大規模事務所において1週間程度,給与をもらいながら就業体験をすることをいいます。名目上は就業体験(研修)となっていますが,実質的には法律事務所の採用活動の一環として非常に重要視されています。特に東京5大事務所に内定をもらうためには,法科大学院在学中にサマクラに参加していることがほぼ必須であるとも言われています。
 
 このサマクラで優秀さをアピールすることができれば,司法試験終了直後に個別訪問に呼ばれ,その場で内定がもらえることもあるようです。ただ,サマクラに参加していなくても,自分から応募すれば個別訪問に呼んでもらえることはあるので(ぼくがそうでした),東京5大事務所を志望される方はあきらめずに個別訪問に応募してみましょう。
 
大阪4大事務所の中にも法科大学院在学生向けサマクラを実施しているところがありますが,内定への影響力は東京5大事務所ほどではないようです。大阪4大事務所の場合は,むしろ司法試験終了後のサマクラが重要です。こちらは今からでも間に合うので,積極的に応募してみましょう。
 
(サマクラ募集事務所の探し方については後述)
 

(2)サマクラの内容 

サマクラでは,訴状や準備書面等の起案,契約書のチェック,法令・判例のリサーチといった課題を与えられます。

サマクラの課題については,①参加者全員に同じ課題を与える場合と,②指導担当者の裁量でその都度適当な課題を与える場合があります。①の場合は起案や検討の結果を,②の場合は結果そのものよりも課題に取り組む姿勢やプロセスを重視しているということでしょうか。いずれにしても,一生懸命に取り組んで能力や意欲をアピールする必要があります。
 
また,短期間ながら実際の職場で一緒に過ごすということは,
 
  ・あいさつができるか
  ・時間を守れるか
  ・人の目を見て話せるか
  ・事務員にも礼儀正しい振る舞いができるか
  ・身だしなみは整っているか
  ・食事や飲み会のお礼を言えるか
  ・飲み会で自分から話題を切り出せるか
  ・自分から質問や報告・相談ができるか
 
といった,社会人としてのマナーも当然見られているということです。
 
 大規模法律事務所としては,ただ数年間起案やDD(デューディリジェンス)のマシーンとして働いてくれる人が欲しいのではなく(そういう事務所もあるかもしれませんが…),ゆくゆくは新しいクライアントを開拓して,パートナーとして事務所の経営を担ってくれる人材が欲しいわけです。そうであれば,法科大学院の成績や起案の能力はもちろん重要ですが,それだけではなく,人間的な魅力も備えていなければ内定を得ることは難しいでしょう。
 
 要は,「こいつと一緒に仕事をしたい」「こいつなら自分の大事なクライアントに合わせても大丈夫だ」「こいつは将来新しいクライアントを開拓していってくれるだろう」という評価をもらうことが重要だということですね。
 

(3)サマクラ募集事務所の探し方

大阪4大事務所については,現時点(平成26年5月19日)でいずれもサマクラの募集をしているようです。詳細は前述のHPを参照してください。
 
また,その他の事務所のサマクラについても「アットリーガル」(http://www.atlegal.jp/list.php)で随時情報が配信されていくかと思いますので,まだ会員登録されていない方はすぐに登録しましょう。ただ,アットリーガル等で情報配信せずに,ひっそりと事務所HPで募集を開始する事務所もありますので,注意が必要です。
 以下の事務所はアットリーガルで配信されなくてもサマクラを募集する可能性がありますので,興味のある方はこまめにHPをチェックしましょう(必ずしも網羅的ではありませんのでご了承ください)。
 
 ・三宅法律事務所(http://www.miyake.gr.jp/
 ・色川法律事務所(http://www.irokawa.gr.jp/law/
 ・関西法律特許事務所(http://www.kansai-lp.com/index2.html
 ・きっかわ法律事務所(http://www.kikkawalaw.com/
 ・共栄法律事務所(http://www.kyoei-law.com/
 ・協和綜合法律事務所(http://www.kyowa-sogo.gr.jp/
 ・第一法律事務所(大阪)(http://www.daiichi-law.jp/
 ・中央総合法律事務所(http://www.clo.jp/
 ・堂島法律事務所(http://www.dojima.gr.jp/
 ・はばたき綜合法律事務所(http://www.habataki-law.jp/
 
 サマクラの選考は,基本的に書類の到着順に随時行われるので,少しでも早く応募することが重要です。そして,早く応募するためには,言うまでもなく迅速な情報収集が欠かせません。興味のある事務所があれば,その事務所がサマクラ(あるいは個別訪問)を募集していないか,こまめにチェックする習慣をつけましょう。
 

4 成績・外国語能力の重要性

大規模企業法務系法律事務所の個別訪問やサマクラに応募するにあたって,必ず申告を求められるのが,法科大学院の成績や語学のスコアです。法科大学院の成績に関してはいいに越したことはありません(そして今更どうにもなりません)が,語学力に関しては,事務所ごとにトーンが異なるようです。
 
ある大阪4大事務所は,採用情報ページで外国語能力を選考上有利な事情として考慮すると名言していますし,その事務所のパートナーは「TOEICスコアが800点以上あれば『おっ』と思うし,少なくとも書類はちゃんと読もうと思う」とおっしゃっていました。他方で,ある東京5大事務所のパートナーは「今の英語力はそこまで重視していない。別に英語ができなくも他に光るものがあれば採用する。英語は実務に出ればできるようになるから」とおっしゃっていました。
 
どのくらい語学力が重視されているのか,実際のところはわかりません。ぼくの当時のTOEICスコアは785点という微妙なものでしたが,採用上有利にも不利にも働いた感触はありませんでした。
 
ただ,一つ言えるのは,今TOEIC等の語学スコアを持っていなくても,それだけで不採用になるわけではないということです。
 
というわけで,TOEICのスコアを持っていないからといって諦めることはありません!とにかく応募してみましょう!(ただ,面接ではTOEICスコアがないことをツッコまれる可能性がありますので,その際は現在勉強中などとうまいことを言って,少なくとも意欲は見せるようにしましょう。)
 
成績についても語学力についても,社会人経験者でない限り法科大学院修了生はみんな似たような経歴なので(失礼!),少なくとも書類選考段階では,数値で比較可能なところで優劣をつけざるをえない,というのが実情なのではないかと個人的には思っています。
 
なお,某法律事務所はイケメンを優遇しているというウワサがありますが,真偽の程は明らかではありません…(笑)。
 

5 面接(個別訪問)のポイント

 (1)個別訪問のスケジュール

東京5大事務所の個別訪問は,司法試験直後から一斉に開始されます。
 
法科大学院在学中のサマクラで高評価を得た人は,試験翌日に事務所側から呼び出され,そのまま内定をもらってしまうというから驚きですね。そういった例外的なケースを除くと,5月下旬から6月上旬までの間に1回目の個別訪問に呼ばれ,それを通過して2回目・3回目と回を重ねていくパターンが一般的です。多くの人は2回目か3回目の個別訪問で内定を得るようです。
 
1回目の個別訪問から2回目の個別訪問に呼ばれるまでの間隔は,ぼくの経験では早くて1週間以内,遅くて2週間以内です。連絡が電話で来る事務所もあれば,メールで来る事務所もあります。2週間を超えてしまうと,基本的には不採用になったと考えたほうがいいでしょう。ただ,まれに2週間以降でも連絡が来るケースもあるようです。
 
このように,東京5大事務所は応募から内定までが非常にスピーディーで,7月中にはほぼ内定が出揃ってしまうようです。
 

(2)面接の内容

東京5大事務所の個別訪問の面接官は,たいていは3人で,パートナー2名+アソシエイト1名の構成が多いように思います。

面接の内容自体は,特別なことを聞かれるわけではなく,お約束の「弁護士になりたいと思った理由」に始まり,「目指す弁護士像」「興味のある法律分野」「趣味・特技」「自分の長所・短所」「最近気になったニュース」といった一般的な質問が多かったように思います。事務所によっては,これらの質問を事前アンケートの形式にして回答を提出させ,それに基づいて面接をすることもありました。
 
ぼくの感触としては,しゃべっている内容そのものよりも,しゃべり方や態度(質問に端的に答えているか,自信をもって話しているか,相手の目を見て話しているか)を重視しているように感じました。

ただ,一度だけ,ぼくが知財に興味があると言ったら,職務発明を法人帰属とする改正案についてどう思うかという議論を持ちかけられたことがありました。その面接官は知財業界でも有名な先生だったので,ちょっと焦りましたが,そのトピックについては,数日前の日経新聞で記事が掲載されており,ぼくはそれを読んでいたので,ぎこちないながらも何とか事なきを得たのでした。(まあ,結果的には内定をもらえなかったのですが…(笑))

今思うと,本当に企業法務に興味があるのであれば,少なくとも日経新聞くらいは読んでいるだろうということで,ちょっと試されていたのだろうと思います。そういうわけで,企業法務系事務所を志望されるのであれば,日経新聞くらいは読む習慣を身につけていた方がいいかと思います。
 
 その他の留意点としては,(東京5大事務所の面接に限らずですが)やはり最後の質問コーナーで積極的に質問をした方がいいということです。質問事項としては,単に自分が知りたいというだけではなく,相手も気持ちよく語れることを聞くべきです。
例を挙げるとすれば,下記のような質問でしょうか。
 
 ・パートナーとして,どういうアソシエイトなら重要案件を任せたいと思うか?
 ・クライアントからの信頼を得るにはどのような努力が必要か?
 ・先生はどうやってその分野のクライアントを獲得してきたのか?
 ・案件に失敗した場合にクライアントとのコミュニケーションで気をつけていることはあるか?
 
そして,こういった質問をすると,キレ者の先生ほど結構な確率で「あなたはどう思う?」と返してきます(笑)。そうなったらある意味こっちのものです。自分の思いを遠慮なくぶつけてみましょう。質問コーナーを利用して,面接で語りきれなかったことを最後にカバーするわけです。
 ここで面接官の琴線に触れることを言えれば,良い印象を残すことができるでしょう。
 

6 「とりあえず応募してみる」のススメ

この記事をご覧になっている方の中には,大規模企業法務系法律事務所には興味がないという方もいらっしゃるでしょう。しかし,ぼくとしては,そういう方であっても,大規模企業法務系法律事務所の個別訪問やサマクラに「とりあえず」応募してみることをおすすめします。
 
応募した結果がどうなったとしても,あなたが失うものは何もないからです。
 
たとえある事務所の選考に通らなかったとしても,他の事務所の就活には何ら影響しません。むしろ,エントリーシートを書いた経験や面接を受けた経験はその後の就活に大いに役に立つはずです。エントリーシートも面接も,結局は場数が大事ですからね(笑)。
 
金銭的な面についても,大規模企業法務系法律事務所の個別訪問であればほとんどの事務所が交通費を支給してくれますし,サマクラであれば1週間で3万円〜5万円ほど稼ぐことができます。
 
そもそも,「興味がない」かどうかは,しっかり自分の目で見てみなければわからないはずです。勝手なイメージやうわさで法律事務所の良し悪しを判断するのは本当にもったいないことです。興味がないと思っていた事務所であっても,実際の案件に触れてみたり所属弁護士さんの話を聞いたりするうちに,考えが変わってくることもあるかもしれません。

ぼくも法科大学院時代には考えもしなかったところに就職することになったクチなので,あえて言いますが,人生はどうなるかわかりません。自分から積極的に動いていけば,きっと素敵な出会いが待っているはずです。
 
是非,大規模企業法務系法律事務所の個別訪問やサマクラに応募してみてください!