はじめての国選弁護(その1) ※旧ブログ記事転載

(※2015年9月に執筆した記事です。)

7月に初めて受任した国選刑事事件が、第1審判決の確定をもって終了しました。

結果は、執行猶予付判決。同種前科がいくつかあり、ほぼ実刑確実と思われた事件だっただけに、執行猶予がとれて非常に嬉しかったです。

普段は企業法務ばかり扱っているので、次はいつ受任することになるかわかりませんが、備忘を兼ねて今回の事件で学んだことを軽くまとめておきたいと思います。

※東京での事件処理を前提にしていますのでご了承ください。

 

1.法テラスでの受任手続

東京で弁護士登録をすると、1年目の義務研修の一環として、国選刑事事件を1件受任しなければなりません(東弁のみ任意)。ぼくが今回受任したのも、この義務研修としての国選事件でした。

 

義務研修の場合、通常受任に優先して割り当てを受けることができ、割り当てられる事件も裁判員裁判対象事件や否認事件は除かれており、窃盗や覚せい剤事犯の自白事件(もちろん受任後否認に転じることもありえますが…)が多いようです。

 

受任の手続は、あらかじめ割り当てられた担当日に、弁護士会館3階の法テラス記録閲覧室にて行います。ここ↓

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義務研修の場合は、①13時に受付開始、②13時50分から記録閲覧・受任という流れになります。

①の受付は、②で受任する事件を選ぶ優先権(順番)を確保するために行われます。
すなわち、①で一番最初に受付を済ませた人は、②でその日の配点事件の中から、自分がやりたい事件を優先的に選べるわけです。とはいえ、②で閲覧できるのは被疑事実・被疑者の氏名・年齢・住所・認否・罪名といった勾留状に記載された事項に限られており、(当たり前ですが)事件の詳細は実際に受任しなければわからないので、優先権があるから「いい事件」を引当てられるとは限りません。

 

2.国選弁護人の選任手続〜起訴まで

法テラスでの手続が終わると、次は裁判所にて国選弁護人の選任を受ける必要があります。東京の場合、地裁(弁護士会館の裏側)1階の刑事第14部にて手続を行います。

 

その後、被疑者との初回接見を行います。

法テラスに配転されている国選対象事件は、基本的に当日勾留決定がなされた事件なので、被疑者は裁判官の勾留質問を受けた後、しばらくは裁判所地下1階の警視庁同行室に収容されています。したがって、通常は、国選弁護人の選任手続を済ませた後、すぐに同行室に向かって初回接見をすることになります。ここでの接見は時間が15分程度に限られているので、今後の手続の説明や権利告知、事実関係の聴取をスピーディに済ませる必要があります。

ちなみに、裁判所地下での接見については、いわゆる接見資料(接見に行きましたという証明書のようなもの)は発行してもらえません。ただ、裁判所地下での接見は、接見資料の添付がなくても報酬算定上「接見1回分」として認めてもらえるので心配はありません。

 

初回接見以降は、警察署の留置場にて接見を重ねることになります。

警察署での接見については、接見資料を作成しておかないと報酬算定上カウントしてもらえません。警察の方から「書かなくていいんですか?」とは言ってくれませんので、忘れないように注意しましょう。

 

なお、被疑者と接見をする中で、外部の人(家族・友人・職場の同僚・情状証人)と連絡をとる必要が出てくることがあります。被疑者がその人の電話番号やメールアドレスを覚えていればいいのですが、そうでない場合がほとんどでしょう。そのような場合、留置場の警察に事情を説明すると、押収されている携帯電話から連絡先を確認して教えてくれることがあります。この辺りは警察も柔軟に対応してくれるので、困ったら頼んでみるといいでしょう。

 

以上、まずは「その1」として被疑者段階での弁護活動について書いてみました。「その2」では被告人段階での弁護活動について書いていきたいと思います。